YORKSHINE TシリーズExchange Awl 4本フルセット
YORKSHINE TシリーズExchange Awl フルセット
French1.8mm/2.0mm//Diamond/Cone
更なる高みを目指す交換もできるマニアックな錐
交換式タイプの錐もちょくちょく見かけるようになりました。
レンチを使って取り外しができるタイプや先端がネジ式になっているものです。
これらは利点もあれば欠点もあります。
レンチで締め付けるタイプ、そして先端のネジを固定するタイプ(写真を参照)の利点は
比較的安価であるという点だと思います。
ちょっと面倒だと思う点は…
交換する時に外部ツールのレンチを取り出す必要があります。
便利ではありますが、レンチのサイズがざまざまなので、もし見当たらないと交換ができません。
先端に差し込んでネジで締め付けるタイプはどうでしょうか?
錐の締め付けがネジのみに頼っているので緩みやすいです。
丸錐は緩んでもさほど問題にはなりませんが、菱目やヨーロッパ目など一定方向に開ける時に
緩んでしまうとせっかくの作品が台無しになります。
このYORKSHINE TシリーズExchange Awl のネジ構造をよく見てください。
錐の後端付近に四角い突起が出ています。
なぜでしょうか?
錐が回転しないという構造になっています。
しかも錐を締め付けているナットの直径は15mmです。
ナットの外側には滑り止めの溝がついているので、摩擦を高めて手で締めやすくなっています。
外部ツール(レンチなど)を使わずに、手で素早く交換できる仕組みは優秀だと思いませんか?
この錐の材質についても書いておきたいと思います。
本体の持ち手は 精密加工された304ステンレス鋼です。
錐はDC53の金属鋼で真空焼き入れ、焼戻し そして窒素ガス加圧冷却をしています。
それで±1HRC62-63 硬度が得られているので、強度、耐摩耗性の点で優れています。
0.2mmというわずかな差は本当に必要でしょうか?
更なる高みを目指す交換もできるマニアックな錐と言える理由はここにあります。
この差はレザクラにおける「繊細な表現と用途の多様性」に対応するためです。
例えば、縫い目の間隔を示す「ピッチ」があります。
ヨーロッパ打ちには2.7mm、3.0mm、3.38mm、3.85mmなど様々なピッチがあります。
ヨーロッパ錐は、基本的に目打ちで印をつけた穴を深くし、縫いやすくするために使われます。
例えば、2.7mmや3.0mmといった「狭いピッチ」の目打ちで開けた穴に、2.0mmの太い錐を使ってしまうと、穴が過剰に広がりすぎたり、縫い目が不自然になったりする可能性があります。
逆に、3.85mmのような「広いピッチ」の菱目打ちの穴に、1.8mmの細い錐では、穴が十分に広がらず、縫いにくかったり、糸が通りにくかったりすることがあります。
この0.2mmの差は、それぞれのピッチの菱目打ちで開けられる穴のサイズに最適化され、より美しい縫い目とスムーズな作業を実現するために設けられているわけです。
実はヨーロッパ錐の刃先のサイズについて多くの質問をいただきます。
YORKSHINEのSシリーズ/Tシリーズの刃先の幅は何ミリですか?みたいな。
一応商品の説明欄にも記載しておりますが、基本的には目打ちの幅と対応してます。YORKSHINEの錐は強度もあり使いやすいツールです。
目打ちで革を貫通させる場合、薄手の革に穴を開ける時には刃先の幅とか厚みとか全く気にならないのです。
ただし厚みのある革に穴を開けるとなると話は別です。
菱目打ちもヨーロッパ目打ちもその構造上、刃先から根元に向かって太くなります。
例えばYORKSHINEのヨーロッパ目打ちですが、先端は1.7mm幅/0.8mm厚なのに、根本になると2.0mm幅/1.4mm厚になります。
岩田屋さんのヨーロッパ目打ちは、刃先が1.9mm幅/0.8mm厚に対して、根元は2.6mm/1.6mm厚みにもなります。
※もちろん岩田屋さんのツールは職人の手造りなので個体差があると思いますし、ツールの何処を測るかでも幅や厚みは異なります
言えることは、厚みのある革を"貫通"しようとすると、開ける側の穴が大きくなるということです。
例えばお財布でも厚みのある部分も薄い部分も同じように目打ちで貫通すると、仕上がりの縫い目にバラツキが生じます。
これは仕方のないことだと思っていました。
実はレザクラ初心者の頃、手先の器用なMIYAZO弟に自前の財布を自慢したことがあります。
見た瞬間にあっさりと「ここの縫い目幅とここが違うけど・・・どうして?」と言われショックを受けたことがあります。
「これは仕方がない」と無駄な言い訳をしたことをも覚えています。
そういうことなのです。
縫い目は同じリズムで並ばないと美しくないのです。
厚みのある部分を貫通させた場合、仕上がり時にその部分の糸だけが深く沈んで小さく見えるこることはありませんか?
プロはもとよりレザクラの達人でもこの域に達している人が大勢います。
この微妙なこだわりが「この錐の幅と厚みは何ミリですか」という質問につながると思います。
ざっくり言うと菱目は菱形の穴が開きますが、ヨーロッパ目打ちは短い斜の線のような穴が開きます。
それでヨーロッパ目打ちは、穴を貫通させるというより、印を付けるためのものとも言われています。
ですから、そもそもヨーロッパ目打ちを使う場合は事前に軽く印を付けて、錐で穴を開けながら縫い進めるということになると思います。
ですから、キレキレの細身の錐があれば作業が捗ります。
多くのレザークラフトをする人は、この問題点を考慮し菱錐を自分で平らに研いでおられます。
私もそうでした。ただし先端のみしか平らに研げないということがあります。
ヨーロッパ錐というツールは先端と後端の厚みがほぼ同じなので、自分で苦労して研ぐ必要がありません。
それでもレザクラの上級者は、もっと鋭く細いものをお探しのようです。それがここにあります。
French刃幅1.8mm/刃厚0.7mm
French刃幅2.0mm/刃厚0.8mm
Diamond刃幅2.3mm/刃厚1.45mm
Cone直径最大2.1mm
菱錐に関して旧Tシリーズより切れ味を落としております。
この点をメーカーに問い合わせたところ…。
「以前の製造方法は鋼板を菱形に切っていたので、全体的に薄く仕上がっていた。
それで切れ味が良かった。
ただし以前のTシリーズをご利用の多くのお客様の中には、
刃先に力を入れた時に錐がたわんで(薄刃故に)折れてしまうことが多かった。
現在は3mmの丸い鋼材を加工するようになり強度が上がった。
旧タイプと比較すると切れないと感じるかもしれませんが、使用には十分な切れ味を確保しています」
確かに錐の根本は丸い鋼材を加工していることがわかるものです。
しかも交換した時に回転しないような精密な加工が施してあります。
※このサイズはMIYAZOが現物を図った得た独自サイズ表記です。
※また同一商品をMIYAZO独自表記で販売することを差し控えていただきたく思います。
このExchange Awlの設計の意図は、まず半分くらい穴を開けて印を付け、この錐で穴を貫通させるということです。
なぜ先ず軽く穴を開ける必要があるのでしょうか?
それは、その穴がガイドになるということだと思います。
革の表面にガイドなしで錐で穴を開ける場合、裏側がガタガタになりませんか?
半分くらい空いている穴があればそのまま突き刺すだけですので、その心配はありません。
もちろん強者はガイドなど必要ないと思いますが…。
目打ちで一気に貫通させないなら作業の手間が増えると感じますか?
確かに手間がかかります。ただしこの手間が商品のレベルを一気に作品に上げると思います。
やはり作られた物を通して、見たことがない作り手が見えるのです。