革職人厳選レザークラフトツール

YORKSHINE 革包丁 M390

新作 YORKSHINE 革包丁M390

刃物の刃は顕微鏡で拡大してみるとセレーション(ノコギリの刃のようなギザギザ)のようになっています。
このギザギザに革の断面が引っ掛かって革が切れるというわけです。
切れ味がいいとは、このギザギザ構造が細かくなるためです。

さて刃物の鋼材についてもMIYAZOの経験と研究についてお伝えしたいと思います。

日本の刃物はどれも素晴らしいです。個人的には世界一だと勝手に思っています。
以前住んでいた地域に鍛冶屋を見つけたので、思い切ってオリジナルの革包丁を作っていただけないかお願いしました。
1本では受けられないということで4本特注いたしました。
他にも菜切包丁とナイフを特注しました。
大枚叩いて70年以上火作りの刃物を作っているという親方を信用して手にした刃物…最初は全く切れませんでした。
かなり焦りました。確か素材は白紙か青紙だと思います。
その後”信義”を作っておられる製作所の女将さんと知り合いになりました。
それで”信義”を愛用するようになりました。5本ほど所有しておりますが宝の持ち腐れですね。
素材は青紙スーパーです。

火造りの刃物に関して、ある程度理解するようになったことがあります。それは日本製の刃物は鍛冶屋が研ぐのではなく、使う人つまり職人が研ぐということです。
鍛冶屋の親父さんのぼやきは”研ぐのは、それを使う職人だ、俺の刃物が切れないはずがない”でした。
信義の二代目も”うちの包丁が切れないと文句を言う初心者がいるのが残念”と話してくれました。

特注の4本が切れないと感じたり、信義が切れないと言われる理由は…研ぐのは職人であるという道具に対する日本人の感覚だと思います。岩田屋さんの菱目さえ最初は抜けが悪いのですが、手を加えると見違えるほど素晴らしくなるのです。
日本の道具というものはそういう物です。

その後…研ぐことに没頭して天然砥石にハマっていくMIYAZOでした。
天然砥石の荒砥中荒砥…10本以上の天然砥石と名蔵を買い揃えました。
研ぎを覚えると日本の刃物の切れ味には感動しまくりでした。
本当に素晴らしいのです。
実は、かなりの時間とお金と流血などの怪我などの投資をしまして、今では研ぐことが好きになりました。

前置きが長くなりました。
まず革包丁を含めヘリ落とし、エッジャーなどの刃物系の材料の話をしたいと思います。

基本的には1)炭素鋼(Carbon Steel)
日本の伝統の刃物は高炭素鋼だと思います。刃物を作るために最も広く使用されているのは炭素鋼で、熱処理により硬度と靱性の良いバランスを維持できるようです。私がよく覚えているのは白紙、青紙1号、2号、青紙スーパーという鋼材があります。
焼き入れにより硬度はステンレス鋼より高くでき良いエッジを保持できるようですが錆に弱いです。
確かに、以前特注した炭素鋼の菜切り包丁は気を付けないとすぐに錆びます。

2) ステンレス鋼(Stainless Steel)
多くの料理用の包丁はステンレス鋼だと思います。
ステンレス鉱は炭素鋼より簡単に切断でき、簡単に削れ、非常に低い温度で焼きなましができるのでコストパフォーマンスが高いです。

錆びにくく、研ぎ易いですし、経済的な価格が魅力なのです。
まずナイフメーカーが最初に認めた鋼材がステンレス鋼と言われています。
ステンレス鋼材も色々ありますが、 100円ショップのもステンレスの一種だと思います。
よく出回っている2000円くらいの革包丁もステンレスです。
粗悪なステンレス鋼は研ぎ易いかもしれませんが長切れしません。
研ぐのが好きな人はこれでいいと思います。

MIYAZOが扱っている道具の鋼材の多くは440Cとかです。
ステンレス素材としては高級な部類に入ると思います。
ナイフメーカーもこの素材を採用していますので、とてもバランスの取れた良い素材だと思います。
切れ味もいいですし長切れします。
しかもこうした素材の革包丁の場合、お買い求めのすぐに後に研ぐ必要はありません。
その切れ味を発揮できます。
MIYAZOが持っているSINCEの革包丁もステンレス鋼440Cです。
普通の砥石で遂げますし。

3)粉末冶金鋼(Powder Metallurgy Steel)

粉末冶金鋼は、インゴットから急冷し粉末に凝固させられた金属の粉末を型に入れ、粉末成形プレスで圧力をかけ固め、それを焼結炉で、金属の粉末が溶けない温度で焼き、粉を焼結させる鋼材です。
粉末鋼は粉末化された素材を融点以下で焼き固めることで組成の偏りを少なくしたり組織を微細化した金属なんだそうです。そのため切れ味はもちろんのこと耐食性も高くなります。反面衝撃に弱く、剣鉈(けんなた)のように使うと折れる可能性があります。
そう考えると革を切ったり革漉き作業の時にナタのように振り落とすことはないので欠けたり折れることはないはずです。
ただし生産方法や鋼材の質の高さを考えると、粉末冶金鋼(Powder Metallurgy Steel)が高価な理由がわかります。
炭素鋼(Carbon Steel) のような硬さがあり、しかも手にした瞬間からキレキレということです。

持ち手(柄)の形状について
火造りの刃物(一般的な包丁や革包丁)の柄はほぼ似たような楕円の円柱です、
革包丁の刃先の理想的な角度は15度と言われています。これよりきつい12度とかですと、革漉きには向かないかもしれません。
あるいは17度とかに仕立てると漉き作業には最適かもしれませんが、薄刃になりますので、刃こぼれがしやすくなります。
また手にした新品の時には刃丈が長いのですが、研いでいるうちに刃丈が短くなり、研ぐ時に柄の円柱部分に当たるようになります。
そうなると薄刃として研ぐことができなくなります。

ここからがYORKSHINEの革包丁についての説明となります。
鋼材は粉末冶金鋼(Powder Metallurgy Steel) のM390です。
実は440C ステンレス鋼(Stainless Steel) のラインナップもありますが、MIYAZOはM390を選択しました。
切れ味と長切れを考えると、やはりM390なのです。
もちろん砥石で研ぐこともできますが、当面必要ないと思います。
手にした時から切れ味が冴え渡るのがYORKSHINEの特徴です。
研磨板などの革床の上で刃先を整えるだけで十分です。
ですからあれこれと砥石を買い揃える必要もないですし、何より研ぐ技術を何ヶ月もかけて習得する必要はありません。
もちろん研ぎを習得したいという勇敢な方は炭素鋼(Carbon Steel) の火造りを使ってみることをお勧めします。
その際、砥石も歪むので砥石を修正する砥石もお買い求めくださいませ笑。
しかも一般的には台所の流しで革包丁を研ぐと思いますが、”砥ぐそ”の汚れでシンク内に傷がついたように見える(砥ぐその粒子が傷の中に入る)ので家内にいつも怒られます。けっこう汚れが目だつのです。
革砥の上で擦るだけなら家族の方に文句を言われることないと思います。

YORKSHINEの革包丁は刃幅は30mmで刃厚は1.65mm。
刃丈は46mmで短めに感じますが、一般的に使い方で刃が短くなりすぎることないと思います。
とにくか握りやすいです。
握りやすさに貢献しているのは柄の形状です。29mmの楕円形で…ちょっとおデブな感じがしますがとてもいいです。
ということでウンチクをまだまだ言いたい所ですが…この辺で。


こうしたMIYAZOの検証説明や写真を真似するショップが多くなりました。
複雑な心境ではあります。

綺麗な箱入りですが完璧ではありません。
箱のことを気にされる方はご遠慮ください。
あまりにも切れ味がいいので、すでに10本以上の革包丁を保持しているMIYAZOもラインナップに加えました。

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